Google検索のメディア化から見る変化

この記事はnote.comからの転載です。

https://note.com/yamarkz/n/ncf5a686b3a9c

はじめに

こんにちは! 山口 (@yamarkz) です。noteデビューです。 少し前にこんなつぶやきをしました。

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筆者はこれまで、Google検索に関連したいくつかのメディアサービスの運営を行ってきました。その職業柄からか、Google検索の小さな変化にも敏感に反応してしまいます。今回呟いたのは、そういった変化を最近顕著に感じたのと、変化の先にある"メディア化"が見え始めたからです。

本記事では、最近気付いたGoogle検索に起きている変化に着目し、そこから見える考察と、メディアの未来について考えてみたいと思います。

目次

メディア化が進む、Google検索

Google検索に起きている変化を一言で表すと、"メディア化 " です。 こう表現するとWebメディアを運営する方々からは、「何を今更、Google検索は広義では情報検索メディアなのだから、そもそもがメディアでしょう。」といった反応が返ってきます。 その通りです。間違っていません。僕もWebメディアを運営してきた人間なので、そういったツッコミをします。

ただ、ここでの"メディア化 "は、以下の様に定義します。

"検索アクションを切り口とした、Googleで完結する、リッチなメディア "

Google検索は今、情報検索という枠組みを超えて、Google検索自体で完結するリッチ (豊富) な情報メディアに変化してきています。これは僕が実際にGoogle検索を利用して感じる変化です。

先の言語定義を理屈で説くよりも、実際に起きている変化を観察する方が納得感があると思うので、実際に変化が顕著に現れている検索クエリをいくつかピックアップして紹介していきます。

変化が顕著に現れている検索クエリ

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まずは本です。「メモの魔力」とタイトルを検索してみると、上記の様な画面になりました。従来では標準的な検索リストが表示されるだけでしたが、現在はトップにAmazonの商品カードが表示されています。この表示形式になっているのは、恐らく本のタイトルで検索を行うユーザーの多くが"強い購買意欲を持っている "という事実が過去のデータの傾向からわかり、Googleはこの表示に変えたのだと推察します。

また、3列目には書籍のレビューと検索ページへのシェアボタンがあります。この表示形式の導入から、"単なる検索結果の1ページが、他者に本を紹介するメディアの一角になりつつある "という変化を汲み取ることができます。

映画

「映画」というクエリで検索してみました。この検索では検索者の位置情報を元に、近辺の映画館で上映されている映画の一覧が見やすいカード形式で表示されています。 これを見て驚きだったのが、映画タイトルと上映場所の他に、現在地からの距離、上映時間、評価、カテゴリー分類までもが表示されていることです。1~2年前までは、トップに出る映画まとめサイト(映画.comなど)に行ってから映画情報を確認していました。それが今ではGoogle検索の1ページ目で意思決定に必要な情報が全て網羅されています。

もちろん、この表示だけで検索者全員が満足する訳ではないですが、こういった検索結果の表示形式の変化により、従来のWebメディアが稼いでいたトラフィックが減る のは間違いないでしょう。

漫画

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漫画系のクエリは、文字よりも視認性の高い画像や関連漫画の画像が表示されています。「メモの魔力」(文章本) の検索ページと比較すると、いかに画像表現が多いかがわかりますね。

"進撃の巨人とONE PIECEに関連するもの" とありますが、実はこの検索ページに着く前に「ワンピース」と検索していました。過去の検索履歴からニーズを推定し、ユーザーが求めている可能性の高い情報をトップに表示させています。こういった推薦の工夫によって、より長い時間Google検索のページに滞在してもらおう というGoogle側の意図が伺えます。

楽曲

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楽曲の検索結果の変化は、年末にTV番組の紅白を見ていた時に気がつきました。気になったアーティストの楽曲名で検索すると、Youtube動画、歌詞、アーティスト名、リリース情報、さらにカバーソングを歌うyoutuberの動画までもが表示されます。

検索結果1ページ目のトップ表示で楽曲に関連する情報の全てが網羅されています。この表示仕様に変わる前までは、楽曲紹介サイトへ飛んだり、歌詞情報サイトへ飛んだりと、検索結果から各サイトを回遊する必要がありました。しかし、今ではその必要がなくなり、Google検索の"1アクション"で主要な情報が得られる状況に変わっています。

これはユーザーにとってはとても便利に感じる反面、従来のサイト運営者からすると、表示形式の変更によりトラフィックを得る機会が奪われています。こういったプラットフォーム側の変化に争うことすらできないのが、それを利用するプレイヤーの最大の弱点 です。

人名

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人名検索の結果もとてもリッチになってきています。 芸能人の経歴から、現在のステータス、最新ニュース、関連する人の情報までもが表示されています。これだけ見るとGoogle検索自体が芸能メディアになりつつある というのが表示から認識できます。

スポーツ (チーム / 個人)

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スポーツ関係のクエリでは過去の試合データ。直近の試合スケジュール。そしてニュースと、チームの概要や経歴が表示されます。

一次情報を提供するコンテンツプロバイダー(ここでいうゲキサカ)にはコンテンツへの導線が表示されるため、トラフィックを得る機会が残されています。しかし、トップに表示されている**"日程・結果" の様な不足のないタブ表記をGoogleに用意されてしまうと、そこで満足するユーザーが少なくとも存在する** ため、総じて従来よりもオリジナルサイトへのトラフィックが減るのは自明です。

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先日快挙を成し遂げた大坂なおみ選手の試合結果一覧。とても見やすいですね。こういった詳細な試合結果のデータは、信頼性の高いコンテンツプロバイダーの存在があってこそ 提供できる情報です。

以上が、変化が顕著に現れている検索のクエリです。 普段無意識的に利用しているGoogle検索も、意識して見てみるとメディアの様に見えてくるのではないでしょうか? 特に最近は独自のパネル表示(カード)が増えてきており、Google側でユーザーに最適な形式で情報を表示しようという意図を強く感じます。

ここまでに起きている変化を元にメディアの未来を考えてみます。

Google自身が侵食する、検索市場

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ここまで挙げてきたGoogle検索に起きている変化から汲み取れるものは何でしょうか?

 自身で色々と考えてみたのですが、結論としてはこの章タイトルにもある様に「Google自身が侵食する、 検索市場 」であると結論づけました。 そこに至る根拠は3つあると考えています。

以下、上から順に見ていきます。

忠実にユーザーファーストを貫くGoogle

Googleは常に利用するユーザーを第一に考えています。これは有名な話で、昔から変わらずこの考え方に則ってサービス改善を重ねてきています。ユーザーファーストの考え方は「Google が掲げる 10 の事実」という彼らの哲学指針の1つ目にあり、とても大事にしている考え方であるというのが見て取れます。

先の事象で紹介した、過去データに基づく 情報の推薦類似情報の推薦不足のない情報のトップ表示 などは全て、Google検索を利用するユーザーに快適な検索体験を届けるために加えられた改善 です。

至極当たり前すぎる考え方と改善アクションですが、Googleはこれを忠実に守っています。

成熟したWebメディア市場

現在起きている改善の変化と、4~5年前(2013年前後)の改善の変化を比較すると、根本的な考え方は変わっていませんが、最近はよりコンテンツに踏み込んだ改善 がなされてきていると感じます。この改善の背景には、良質なコンテンツプロバイダーの存在があると推察します。

45年前と比べると、Webメディア市場は成熟してきました。各検索カテゴリーには良質なコンテンツを提供するプロバイダーが確立され、常に信頼性の高い情報が提供される状況になってきています。それまでは良質なコンテンツが少なく、またコンテンツプロバイダーも確立されていなかったため、それらを含めた収集情報の最適化が主でした。 Googleはあくまで情報を収集、精査、最適化して表示する存在であるため、コンテンツプロバイダーあってこその存在です。 信頼性の高い良質な情報と、それらを提供するコンテンツプロバイダーが揃い、検索情報の環境が整ってきたタイミング(直近12年前)で、ユーザーに情報を届ける形式への改善が始まってきています。

なので、現在起きている変化は市場の成熟あってこその変化だと言えます。

コンテンツプロバイダーへのトラフィックの減少

先の2つの根拠(ユーザーファーストな改善 / コンテンツに踏み込んだ改善)の影響から、コンテンツプロバイダーへのトラフィックが減少することが見込まれます。

先に紹介した6つの事例では、どれもGoogle検索だけで完結する表現がされています。

こういったGoogle検索自体がカバーする情報のバリエーション が増えた結果、従来発生していた各サイトへの流入や回遊が減り、トラフィックの減少が発生します。オーソドックスなメディア運営者はユーザートラフィックを稼ぎ、訪問ユーザーに最適な広告を表示することで収益の上げる形を取っています。なので、流入や回遊が減少することは、結果的にメディア運営者の収益を減らすこと繋がってきます。

これらを整理すると、

Googleはユーザーファーストの考え方 で、コンテンツに踏み込んだ改善 を行なった結果、メディア運営者側の収益を減らす 状況が生まれ始めている。

ということです。

これが「Google自身が侵食する、検索市場 」であるという結論に至った流れです。

Googleはただ単にユーザーに向き合った改善を重ねているだけですが、それは結果的にGoogle自身が生み出した検索市場を、Google自身が侵食する形になっているのです。

まだまだ、こういったGoogle検索の改善は続いていくことが予想されます。 今後の検索市場がどういった形になっていくのか。侵食されるコンテンツプロバイダーにはどういった影響が出てくるのかは注視していきたいです。 また、Google検索自体はとても使い勝手の良い、代わりのきかない存在です。今後もより良いサービスになっていくことを期待しています。

まとめ

この記事に対する反応

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最後に

Google検索に起きているメディア化への変化を紹介してきました。 noteは1500字前後がベターらしいですが、5000字近く書いてしまいました。。。。今度はもう少し軽めに書いてみます。

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